浄 土
命限りの母を呼ぶ声の響き。
そのひたすらな一念が
春まだ早き昼日の
セルリアンの空一杯に満ちあふれ
その児を抱き
母をも抱き
永遠の
在りて在らぬ愛憎の
彼方にぞ開け出でて
いまははや
かなしき浄土の現前を
ただ無心にぞ遊戯びたり。
人知れず涙なすあなたに
人知れず涙なすあなたに
この小さな光を贈ります
この光はありふれた光にすぎないのですが
それでもその優しい明るさに気付かれたなら
その物憂く沈んだ心の内も
少しはなぐさみを見出して
時々はその口辺に笑みを浮かべることにもなるでしょう。
そして、人の心に巣食う悲しみの多くが
こんなささやかな光を見失って現れた
ほんのひとときの迷いにすぎないことに気付くでしょう。
そうすれば、きっと、
人知れず涙なすあなたよ、
今はその頬を流れる憂いの粒も
やがて晴れやかにも乾き果て
明るい光を放ち始めたその顔が
やがて愛する人の口辺を
頬笑ませることにもなるのです。
そんな嬉しい日のあなたを想い
まだ閉じられたままのその心の中に
今はそっと、この小さな光を忍ばせましょう。