さて、次はネバーエンディング・ストーリーです。
本好きないじめられっこのバスチャンが体験する不思議なものがたり。
現実とファンタージェン(本の中の想像世界)がいつの間にか一つに融け合ってしまう。
───さて、本を読みながらそのまま寝てしまった夜、バスチアンはまた、亡くなったお母さんの夢を見てしまいます。そして翌日、一人テーブルで朝食を食べようとしていると、前日、算数の先生からの電話を受けた父親が話しかける。
Son,
I think It’s time you and I had a little
talk.
(そろそろちゃんと話をしてもいい頃だろう。)
[
It’s time + 過去動詞
〜してもいい時間 (仮定法) ]
そして、学校にうまく適応できていないらしいバスチアンに次のように言う。
But,
Bastian, you’re old
enough to get your head down out of the clouds and start
keeping both feet on the ground, right?
(でもね、バスチアン、もうお前は大きいんだから、空想にふけってばかりいないで、現実を見るようにしなけりゃだめだよ。)
Stop
daydreaming. Start facing your problems, okay?
(空想はやめなさい。自分の問題に取り込むんだ、いいね。)
ややもすれば想像の世界に閉じこもりがちな幼いバスチアンに、父親らしくもっと地に足をつけるようにと諭す。
───場面は大きくとんで、
戦士アトレーユが巨大な海がめのモーラに、ファンタージェン国の女王様がご病気だということを知っているか、と尋ねたときのモーラの答え。
Not
that it matters, but yes. Actually, we don’t care.
(どうでもいいことだが、知っとる。もっともそんなことはどうでもよい。)
Nothing
matters. (どうでもいいことじゃ。)
───幸運の竜、ファルコンにグモルクの鋭い歯牙から救い出されたアトレーユが、ファルコンの腕の中で目覚める。そのときの様子を描写した、本の中の地の文を、バスチアンが口に出して読む。
He
was clean and his wounds were dressed.
(彼はきれいになっており、傷は手当てされていた。)
───さて、女王様を助ける方法を教えてもらうために、いよいよ南のお告げ所の第一の門を通過しなければならなくなったアトレーユ。しかし、その門にいるスフィンクスは
The
sphinxes’eyes stay
closed until someone who does not feel his own worth tries to
pass by.
(スフィンクスの目は閉じてるが、自分に自信がない奴が通過しようとすると開く。)
のであった。
ちょうどその時、黒い馬にまたがり輝く鎧を身にまとった騎士がその門を通ろうとして失敗する。すると南のお告げ所を研究しているエンギウックが、格好のいい鎧も役に立たないと言った後、次のように言う。
The
sphinxes can see straight into your heart.
(スフィンクスは心を見通すんじゃ。)
───アトレーユはその第一の門を無事通過することに成功する。しかし、その後に引き続いて第二の魔法の鏡の門を通らなければならない。その門は、
Next
is the magic mirror gate! Atreyu has to face his
true self!
(次には魔法の鏡の門がある!アトレーユは本当の自分を見る羽目になるんじゃ!)
───虚無の魔の手から逃れながら廃墟となった都市をさ迷ううち、いつしかアトレーユは、倒壊したビルのコンクリートの壁に、これまで自分が体験したさまざまな場面が描かれている場所に出る。その絵を眺めながら歩いていると、やがて、壊れた石のうす暗い壁の中に潜んでいる虚無を背後で操る力の召し使いグモルクのすぐ間近にやってくる。まだグモルクの存在に気が付いていないアトレーユに、グモルクがそれ以上近づくなと威嚇する。それに引き続き両者の間で次のような会話が交わされる。
Don’t you know
anything about Fantasia?
It’s the world of human fantasy. Every part, every
creature of it is a piece of the dreams and hopes of mankind. Therefore,
it has no boundaries.
(ファンタージェンのことを何も知らないのか。ここは人間の空想の世界だぜ。すべての部分、すべての生き物が人間の夢と希望で出来てるんだ。そんな世界に国境などあるはずがない。)
But
why Fantasia dying, then?!
(じゃ、どうしてファンタージェンが消滅しているんだ?)
Because
people have begun to lose their hopes and forget their dreams.
So the Nothing grows stronger.
(人間が希望を失い、夢を忘れ始めたからだ。だから虚無が勢力を伸ばす。)
What is the Nothing?! (虚無って何?)
It’s the emptiness that’s left. It is like a despair
destroying this world. And I have been trying to help it.
(あとに残された空しささ。この世を破壊する絶望感のようなものだ。俺様はその手伝いをしている。)
But
why? (どうして?)
Because
people who have no hopes are easy to control and whoever has the control has
the power.
(希望を持たない人間は操りやすく、操る者が権力を持つからさ。)
やがて覚悟を決めたアトレーユがグモルクに向かって叫ぶ!
If we’re about to die anyway, I’d rather die
fighting! Come for me, Gmork! I am Atreyu!!
(どうせ死ぬなら、戦って死ぬ!かかってこい、グモルク!俺がアトレーユだ!)
―――やがて美しかったファンタージェンの世界が虚無によって破壊されてしまう。そして、そのファンタージェンの世界を救ってくれる最後の望みであるバスチアンについて、アトレーユは次のような問いを叫び、女王がそれに答える。
How could he let that happen?!! (彼はどうすればいいのですか?)
He doesn’t understand
that he’s the one who has the
power to stop it. He simply can’t imagine that one little boy could
be that important.
(彼は知らないの、自分に止めるだけの力があるということを。彼には想像できないのよ、小さな男の子がそんなにも重要だということが。)
―――象牙の塔で、いよいよ虚無に追い詰められた女王がバスチアンに言う。
...why
don’t you do
what you dream? Bastian?!
(...どうして夢で見た通りにしてくれないの?バスチャン!)
But I can’t! I have to keep my feet on the ground!
(できないよ! しっかり足を地につけておかなくちゃいけないんだ!)
と言って、バスチアンは健気にも今朝父親から言われたいいつけを守ろうとする。
―――とうとう、女王のファンタージェンがすべて消えてしまった後、新しい世界の始まりの暗闇の中で、バスチアンの夢や望みからまたファンタージェンが新しく生まれ変わると女王から言われたバスチアンは、願いはいくつまでいいの?と訊ねる。その問いかけに女王は次のように答える。
As many as you want. And the more wishes you
make, the more magnificent Fantasia will become.
(あなたの好きなだけ。願いがたくさんあればあるほど、ファンタージェンは素敵になるのよ)
magnificent(会話:極上の、とてもすばらしい)
真の夢と希望を失いつつある虚無的な現代世界に、この映画は、夢のような映像を通して警鐘を鳴らしているかのようである。